今回も、管理職の重要な役割の1つ「人材育成」の話です。
・「部下が成長する」とは、どういうことなのか?
・部下の成長に必要なものは何か?
・部下を成長させるために、管理職や上司は、どんな行動をするべきか?
という内容になります。
次のような人に、この記事を読んでいただけると嬉しいです。
・部下の成長を願う管理職や上司の人
・部下を成長させるための自身の役割に悩んでいる管理職や上司の人
「部下の成長」とは何か?
僕が考えていた「部下の成長」とは?
部下の役割は、「仕事を実行すること」だと僕は考えています。
そして、仕事を実行し、成果を出していくために、必要な能力―知識や技術、経験―を習得することが「部下の成長」だと僕は考えていました。
・新入社員は「できないこと」を「できるようになること」
・中堅・ベテラン社員は「欠点や苦手なこと」を「直すこと」
これが成長だと僕は考えていました。
そのために、管理職や上司は、部下の「足りないところ」や「直すべきところ」を指摘し、能力の獲得、欠点の修正に向けた部下の取組結果を評価し、アドバイスをする。
「部下の成長」には、管理職や上司のこのような行動が必要だと僕は考えていました。
「部下の成長=能力の習得」という間違い
管理職として1年が過ぎ、僕自身の人材育成の結果を振り返りました。
「部下ができるようになったこと」や「修正した欠点」は、確認できました。
「部下の仕事の成果」も同様に確認できました。
でも、「部下が習得した能力がどう作用して、仕事の成果を生み出したか」は、僕にはわかりません。
「部下の仕事の成果を生み出したものは、その習得した能力なのだろうか?」という疑問が僕の頭に浮かびました。
考えてみると、「能力の習得」は、「仕事に必要な条件を満たすこと」には、なり得ますが、それだけでは、「仕事の成果を出すこと」や「仕事の成果を高めること」には、つながりません。
このことは、能力は高いのに(高いはずなのに)、仕事をうまくできない人が一定数いることからもわかります。
「仕事の成果=能力の習得」と言えないのですから、「部下の成長=能力の習得」という僕の考えは間違っていることに気がつきました。
仕事の成果そのものに注目すること
「部下の成長」とは何なのか、わからなくなった僕は、自分が「部下の成長」を願う理由に立ち戻って考えてみました。
組織としては、業績・成果をあげたいというのが、もちろんあると思います。
僕としては、部下が仕事で成果を出し、この職場で活躍し続けてほしいという思いが強くあります。
部下の能力ではなく、「行動」に注目してみると、昨日までと今日とで、その変化に気づくことがあります。
部下の「仕事の成果や活躍」に注目してみると、「日に日に、上手に仕事をできるようになっている」という部下の変化に気づくことができます。
この部下の変化が「仕事の成果を出すこと」や「仕事の成果を高めること」につながります。
この良い変化が続いている状態、つまり、「部下が仕事の成果を出し続けること」「部下の仕事の成果が高まっていくこと」が「部下の成長」そのものだということに僕は気づきました。
「部下の成長」とは、「仕事の成果を出し続けること」「仕事の成果が高まっていくこと」
これらのことから、僕は次のように考えています。
✓「部下の成長」とは、「能力の習得」や「欠点の修正」のように、一定の水準に達することではない。
✓「部下の成長」とは、良い変化が継続し、「仕事の成果を出し続けること」「部下の仕事の成果が高まっていくこと」である。
「部下の成長」のために管理職や上司がとるべき行動
僕は、「部下の成長」を「仕事の成果を出し続けること」「仕事の成果が高まっていくこと」とした上で、それらに必要なもの、管理職や上司がとるべき行動はなんだろうか?と自身の役割に課題を感じていました。
僕は、次の本を読んだことをきっかけに、自分の役割を見出すことができました。
・「NINE LIES ABOUT WORK 仕事に関する9つの嘘」(株式会社サンマーク出版)
その中でも、特にヒントになったのは、次の一節です。
人はフィードバックを求めているのではない。注目を、さらにいえば自分が最も能力を発揮できることへの注目を求めているのだ。
引用元「NINE LIES ABOUT WORK 仕事に関する9つの嘘」<著者:マーカス・バッキンガム、アシュリー・グッドール、訳者:櫻井祐子>(株式会社サンマーク出版)
部下を伸ばすことを願うのなら、<略>チームの誰かがあなたの心をほんのわずかでもゆさぶるような仕事をやすやすと見事にやり遂げる瞬間に意識的に目を光らせて過ごし、そして今見たばかりのことを本人に伝えるのだ。
引用元「NINE LIES ABOUT WORK 仕事に関する9つの嘘」<著者:マーカス・バッキンガム、アシュリー・グッドール、訳者:櫻井祐子>(株式会社サンマーク出版)
失敗の指摘ではなく、成功への注目
管理職がしがちな「失敗の指摘」への注力
職場では、ミスや事故など、部下がかかわる様々な「失敗」が起きます。
そんなとき、管理職や上司は、部下の失敗を指摘し、修正し、同じ失敗が起きないようにしなければいけません。
ただし、「失敗の指摘」は、「失敗を防ぐ」だけの効果しかありません。
仕事をうまく行い、成果を出していくには、別のものが必要です。
さらに悪いことに、管理職や上司が「失敗」に注目し、それを指摘することに力を入れれば入れるほど、部下は意識と力を「仕事の上達」ではなく、「失敗を防ぐこと」に向けるようになります。
管理職や上司が「失敗の指摘」に注力することは、部下の「仕事の成果」につながるどころか、遠ざけることになると僕は考えます。
管理職が注目すべきは「部下の成功」
仕事で成果を出し続けたり、成果が高まっていくためには、日々の仕事の上達が必要となります。
「日々の仕事の上達」は、ちょっとした成功の積み重ねです。
この「ちょっとした成功」、つまり、「うまくいったこと」「できてしまったこと」ー何の問題も生じずに、スムーズに進んだことーは、「失敗」に比べて、部下自身も気がつきにくいものです。
良い変化を積み重ねるためには、管理職や上司が、この「うまくいったタイミング」を逃さず、部下にその「成功」を伝え、気づかせることだと、僕は考えます。
それによって、部下は「どんなときに、うまくいったのか」を振り返って、自ら考え、「成功をくり返せる」ようになるのです。
管理職や上司が「部下の成功」に注目することが、「仕事で成果を出し続ける」ための部下の行動につながると僕は考えます。
管理職は部下の「失敗」ではなく、「成功」に注目すること
失敗の指摘は、「部下が仕事で失敗しないようになる」だけ。
部下が成功をくり返して、「仕事で成果を出し続ける(=成長)」ために必要な管理職の行動は、「部下の成功に注目すること」であると、僕は気づきました。
評価ではなく、成功への反応
管理職がしがちな「部下の評価」への注力
僕は管理職になった際の研修で、「あなたの重要な役割の一つは、部下を適正に評価することです」と言われ、いくつかの評価技法を習得するよう、伝えられました。
僕自身の人事評価の項目にも「評価力」という項目があります。
なので、僕は、部下が仕事で優れた成果を出したり、模範となる行動を示したとき、「これは、人事評価項目の◯◯という分野で、プラス加点」などと当てはめ、記録していました。
その記録をとりまとめて、部下の評価結果とするわけです。
ただ、「◯◯という評価項目について、あなたはAと判定されています」といったものを、半年や1年に1度、部下に伝えたとしても、それは「部下が仕事で成果を出し続けること」には何の効果も持たないと僕は考えます。
なぜなら、「仕事の成果を出し続けているもの」は、部下の「日々の仕事の上達」だからです。
部下が知りたいのは、「数字や記号で表された過去の自分」ではなく、今まさに「毎日の仕事をうまくできているか?」ということだと僕は、思うからです。
管理職や上司が、部下の関心ごとではない「評価」に注力しても、「部下の仕事の成果」には、つながらないと僕は考えます。
管理職が示すべきは「部下の成功への反応」
この部下が知りたがっていることー今まさに「毎日の仕事をうまくできているか?」ーということが、部下を「日々の仕事の上達」に向かわせるのだと僕は思います。
「部下の成功の都度、上司が認めること」で、部下のこの問いに答えていくことが大切です。
管理職や上司が、部下の「うまくできたこと」に、その都度、称賛や感嘆、今後の期待を示し続けるのです。
こういった管理職や上司の「反応」(部下にとっての承認)が、部下を「日々の仕事の上達」に向けた行動に向かわせるのだと僕は思います。
管理職や上司が「部下の成功」に反応することが、「部下が仕事で成果を出し続けること」につながると僕は考えます。
管理職は部下に「評価」ではなく、「反応」を示すこと
管理職や上司からの定期的な「評価」では、部下の日々の仕事は上達しない。
部下が成功をくり返して、「仕事で成果を出し続ける(=成長)」ために必要な管理職の行動は、「部下の成功への反応―称賛や感嘆、期待―を示すこと」であると、僕は気づきました。
アドバイスではなく、問いかけ
管理職がしがちな「アドバイス」への注力
管理職や上司は、部下に無い「成功体験」を持っていることが多いので、「アドバイス」を与えたくなるものです。
僕自身も、部下から相談を受けると、「自分の成功方法」を「教えて」しまっていました。
でも、経験に差があれば、当然、理解にも差が生じるので、「教えたとおりに」再現できることは、ほとんどありませんでした。
また、僕と部下は全く別の人間ですから、考え方や感じ方は違います。
なので、「僕がうまくいった方法」を部下が再現できたとしても、それが「部下が仕事で成果を出し続ける方法」となることは、ほとんどないと思います。
管理職や上司が、経験も考え方も異なる部下への「アドバイス」に注力しても、「部下の仕事の成果」には、つながらないと僕は考えます。
管理職がすべきは「部下の成功に向けた問いかけ」
「仕事で成功する方法」に気づき、理解し、実践できるのは、当の本人だけです。
管理職や上司ができることは、部下に「成功には、何が必要だと思う?」と問いかけることです。
部下に「もっと良い考え方や視点は、ないだろうか?」と問いかけ、一緒に考えることです。
部下に「どんな方法なら、成功に向けて行動できそうか?」と問いかけ、応援することです。
このような管理職や上司の「成功に向けた問いかけ」が、「部下が仕事で成果を出し続けること」につながると僕は考えます。
管理職は部下に「アドバイス」ではなく、「問いかけ」をすること
部下が、管理職や上司からの「アドバイス」で「成果を出し続けること」は、ほとんどない。
部下が成功をくり返して、「仕事で成果を出し続ける(=成長)」ために必要な管理職の行動は、「成功に向けて、部下に問いかけ、一緒に考え、応援すること」であると、僕は気づきました。
部下を成長させるために上司がとるべき3つの行動
以上のことから、僕が学んだ「部下を成長させるために上司がとるべき3つの行動」は、次のとおりです。
✓部下の「失敗」ではなく、「成功」に注目すること
✓部下に「評価」ではなく、「反応」―称賛や感嘆、期待―を示すこと
✓「アドバイス」ではなく、成功に向けて「問いかけ」、一緒に考え、応援すること
本から得た学びを実践し、より良い明日、
より良い世の中に。
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