今回は、「リーダーシップ」についての記事です。
新任管理職である僕自身がリーダーシップについて「誤解」していた経験も交えて、
・「リーダーシップ」とは何か?
・管理職が「リーダー」になるためには、どうしたらよいか?
ということについて書かせていただきました。
次のような人に、この記事を読んでいただけると嬉しいです。
・部下を率いていくのは「スキルや知識、経験」だと思っている管理職・上司の人
・自分には「リーダーシップがない」と思っている人
新任管理職の僕がしていた「リーダーシップ」についての3つの誤解
誤解①:管理職(課長)になった=リーダーになった
1年と少し前に、僕は係長から昇進し、管理職(課長)になりました。
「管理職・課長」という肩書とともに、部下の人事評価や業績評価、課の業務方針を決める「権限と役職」を組織から与えられました。
僕は、この「権限と役職」を得たことで、「部下を率いる人=リーダー」になったと考えました。
でも、それは僕の「誤解」でした。
部下に対する「権限と役職」がある僕は、部下に「指示・命令」することはできました。
指示・命令に対する個々の結果は出ましたが、「権限と役職」の上に立った僕のやり方は、「部下の自発的な行動と成功」や「チームの前進と成長」には結びつきませんでした。
「権限と役職」では、部下を率いること―部下が、そのリーダーと自分が属するチームのために、力を惜しまず貢献しようとすること―は、できないことを僕は実感しました。
誤解②:マネジメントスキルの発揮=リーダーシップがある
次に僕がした誤解は、「マネジメントスキルを発揮すれば、部下を率いていくことができる」というものです。
権限と役職に頼った「指示・命令」では、うまくいかないことを実感した僕は、職場運営や部下の指導方法などを工夫するようにしました。
目標管理・KPIの手法や1on1ミーティングなどに力を入れ、「マネジメント」を重視して取り組んでみました。
「指示・命令」型のときよりは、目標の見える化や仕組み化など、「チームっぽい感じ」にはなりました。
「部下をまとめている」ような感覚も僕は得られました。
しかし、当の部下たちの行動は、「指示・命令」型のときと、さほど変わりはありませんでした。
このときにした僕の「マネジメント」も、部下の成功やチームの成長に良い影響を与えることはできませんでした。
スキルでは、部下を「管理」することはできても、「率いる」ことはできない、と僕は実感しました。
(僕のしていたマネジメントの詳細については、別記事「【学び】新任管理職が陥りがちな「悪いマイクロマネジメント」から脱出する方法」をご覧ください。)
誤解③:「リーダーシップ」にはスキルや資質が必要である
3つ目の僕の誤解は「部下を率いるためには、スキルや資質が必要である」というものです。
新任管理職として「部下を率いる」ことに難しさを感じた僕は、「『リーダーシップ』というスキルがあるならば、それを習得したい」と思いました。
また、部下を惹きつける「リーダーらしい人間性や魅力も持ち合わせていなければいけない」とも思うようになりました。
しかし、「リーダーシップ」について調べてみると、その理論や種類、スタイルは多岐にわたり、覚えることすら困難です。
そして、「リーダーシップのある人」は、とても素晴らしい能力や特徴を兼ね備えているようで、僕には足りないものばかりでした。
膨大な「リーダーに必要な能力・特徴リスト」を網羅し、業務・部下に合った種類・スタイルで実践することは、僕にはとても無理なように思えました。
その一方で、世の中や職場の「リーダー」は、本当にこれらをすべて兼ね備え、いく種類ものリーダーシップスタイルを実践しているのだろうか?という疑問を僕は持ちました。
リーダーシップの正体
そのような悩みや疑問を感じているとき、僕は次の2冊の本を読みました。
・「NINE LIES ABOUT WORK 仕事に関する9つの嘘」(株式会社サンマーク出版)
・「1兆ドルコーチ―シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え」(ダイヤモンド社)
そして、次の一節をヒントに、僕は「リーダーシップ」についての考えを改めることができました。
「人を導くこと」と「人についていくこと」は、抽象概念ではない。それらは人と人との交流であり、人間関係である。そしてこれらを結びつける感情的つながりと信頼、愛は、すべての人間関係の共通項なのだ。
リーダーであるあなたがそのことを忘れてしまえば、たとえ理論上の世界で重要とされるすべてをマスターしたとしても、誰もあなたについてこないだろう。
引用元「NINE LIES ABOUT WORK 仕事に関する9つの嘘」<著者:マーカス・バッキンガム、アシュリー・グッドール、訳者:櫻井祐子>(株式会社サンマーク出版)
人がすべて
あらゆるマネジャーの最優先課題は、部下のしあわせと成功だ。
引用元「1兆ドルコーチ―シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え」<著者:エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル、訳者:櫻井祐子>(ダイヤモンド社)
僕が見ていたものと、見ていなかったもの
新任管理職として「部下を率いていきたい」と思っていた僕が考えていたこと、していたことを振り返ってみると、次のように「自分のこと」ばかりを僕は見ていたことに気がつきました。
・自分の権限や役職、やるべきこと
・自分のマネジメントのやり方、どう部下を管理するか
・自分のスキルや能力、資質、どうしたらリーダーになれるか
「自分がどのようにリーダーとして振る舞うか」は考えていたのですが、「どうしたら、部下はついていこうと思ってくれるか」という視点が抜け落ちていました。
どれだけ優秀で、すばらしいリーダーとしての資質を持っている人がいても、その人の後ろに「ついていく人」(フォロワー)がいなければ、その人は「リーダー」ではありません。
僕に一番足りなかったものは、「スキルや能力、資質」ではなく、「部下に『この人についていこう』と思わせるもの」だったということに気がつきました。
部下をフォロワーとして動かすもの
人が人に「ついていく」という行動の根本を、リーダー側の能力やスキル、資質に求めることをやめれば、僕自身がフォロワーだった経験があるので、そのときの経験を基に考えることができます。
過去を振り返り、自分の時間や未来を託して「ついていこう」と思った時のリーダーとの関係性が手がかりになりました。
僕をフォロワーとして動かしていたものは、次の3つの「感情」でした。
自分は大事にされているという感情
自分の時間や未来は、誰にとっても大切なものです。
この大切なものを託そうと思うためには、その相手に、「自分は『大事にされている』という感情」を持てることが大前提になります。
自分の仕事に対する考え方や価値観、キャリアが尊重され、共感を得て、この感情が生まれていました。
充実感と成長しているという実感
自分が「ついていく」という行動に移るためには、その行動によって、自分自身に「良いこと」がある必要があります。
僕の場合は、費やした時間から「充実感」が得られ、託した未来に向かい「成長しているという実感」が得られたことです。
自分の成功・成長が注目され、機会と支援を与えられることで、この感情が生まれていました。
必ずできると信じられているという感情
リーダーと部下の「導く」「ついていく」という関係性を維持し、時間と未来を共有していくためには「信頼」が必要です。
「リーダーに僕は信頼されている」という感情は、この関係性の維持に、とても大きな影響を与えていたと思います。
仕事の進め方に自由度があり、自分の考えや判断、決定に賛同が得られることで、この感情が生まれていました。
リーダーシップの正体―フォロワーとしての「感情」を呼び起こすこと―
僕自身のフォロワーの経験から、リーダーシップを僕は次のように考えました。
リーダーシップとは、リーダー自身の何らかの能力や資質、スキルの発揮のことではない。
「この人についていこう」という「感情」―フォロワーとしての感情―を呼び起こすこと。
管理職が「リーダー」になるためにすべきこと
「部下の成功・幸せ」を価値観の最も上位に置くこと
リーダーシップについての考えを改めた僕に、次の疑問が浮かびました。
・僕自身がフォロワーだったときの感情は、あの3つだったけれど、僕の今の部下も同じ感情なのだろうか?
・人によって感情が異なるとすると、僕ができることは何だろうか?
もちろん、「フォロワーとしての感情」を列挙して、それらを呼び起こすための能力・特徴を習得することではないのは、わかりました。
僕自身のフォロワーとしての感情と「リーダーについていく」ことの先にあったものを考えることで、1つの答えを僕は見つけることができました。
それは、フォロワーとして行動することで得られる僕自身の「成功・幸せ」です。
感情は人それぞれ違っても、その先にあるものは共通していると僕は考えます。
管理職がリーダーになるためにすべきことは、価値観の最も上位に「部下の成功・幸せ」を置くことだと僕は気がつきました。
「部下の成功・幸せ」を願い、未来を考え抜くこと
「部下の成功・幸せ」を最も上位に置いたら、次にすべきことは、それを心から願い、未来を考え抜くことです。
一人ひとりの「部下の成功・幸せ」を深く考えたことは、リーダーの「真剣さ」になって現れるはずです。
部下やチームの未来を考え抜いたことは、リーダーの「自信」になって現れるはずです。
リーダーの中に「真剣さ・自信」を見た部下は、そのリーダーを信頼し、「ついていこう」という感情が生まれると僕は考えます。
考え抜いた言葉・行動を部下に示すこと
「部下の成功・幸せ」を心から願い、未来を考え抜いたら、次にすべきことは、それを言葉・行動で部下に示すことです。
「真剣さ」を帯びたリーダーの言葉・行動は、部下にチームや使命とのつながりを感じさせ、力を与えます。
「自信」を帯びたリーダーの言葉・行動は、部下の未来への不安を取り除き、力を与えます。
リーダーの言葉・行動から力を得る体験を通じて、部下に「ついていこう」という感情が生まれると僕は考えます。
「リーダーシップの正体」と「リーダーになるために必要な3つのこと」
以上のことから、僕が学んだ「リーダーシップの正体」と「リーダーになるために必要な3つのこと」は、次のとおりです。
✓ リーダーシップとは、「この人についていこう」という「感情」―フォロワーとしての感情―を呼び起こすこと。
✓ 管理職がリーダになるために必要な3つのこと。
①「部下の成功・幸せ」を価値観の最も上位に置くこと
②「部下の成功・幸せ」を心から願い、チームの未来を考え抜くこと
③「真剣さ・自信」を帯びた言葉・行動を示し、部下に力を与えること
本から得た学びを実践し、より良い明日、
より良い世の中に。
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