今回は、管理職の役割や「ビジョンを掲げる」ことについての記事です。
新任管理職である僕自身が、自分の「役割」を誤解していた経験も交えて、
・管理職の立場と役割
・ビジョンとは一体何か?
という内容について書かせていただきました。
次のような人に、この記事を読んでいただけると嬉しいです。
・「自分の役割は、目標設定と進捗管理だ」と思っている管理職の人
・「部下に自発的な行動を促したい」と思っている上司の人
管理職の「役割」についての誤解
新任管理職の僕がしていた「役割」の誤解
管理職1年目の僕は、「部下に適切な目標を設定させ、その行動を管理すること」が自分の最も重要な役割だと誤解していました。
そして、次のような行動をしていました。
①組織目標→管理職(僕)の目標→部下の目標とつながるように、部下に目標を再設定させました。
②部下の仕事の進捗状況を把握するためだけのミーティングをしていました。
③進捗報告を受けた際に、次の作業の進め方など細かいフィードバックを行っていました。
今、振り返ると、誤解というよりも「思い込み」に近かったです。
完全に間違った方向だったと、今は反省しています。
(この頃の、僕の間違ったマネジメントとその結果については、別記事「【学び】新任管理職が陥りがちな「悪いマイクロマネジメント」から脱出する方法」をご覧ください。)
なぜ、「役割」を誤解してしまったのか
管理職になって半年がたった頃、自分の課の業績や指導・人材育成の成果を見い出すことができなかった僕は、「この半年間、自分は管理職として何も機能していなかった」と反省していました。
今は、業績や人材育成の成果が出てくるまで「待つ」ことも大切なことだと思えるのですが、当時は焦りや無力感の方が大きく、そのことに気づくことができませんでした。
「僕自身が、動かなければいけない」という思いが強かったです。
そして、組織の仕組み上、部下の係長職は、僕の指示には一応従ってくれますので、目標の再設定・すり合わせや、進捗報告のミーティングを行うことはできてしまいます。
実際に、部下の目標管理を強め、進捗報告を求めることで「何かをしている感」を僕は得ることができました。
その「管理」が、課の業績や人材育成の成果に全くつながっていなかったとしても、日々、部下の仕事の進捗状況に接し、フィードバックを行うことで「管理職っぽい感じ」が得られるので、僕は、それが自分の最も重要な「役割」と誤解してしまったのです。
「役割」の誤解が引き起こした結果
部下のやらされ感
僕とのすり合わせの中で立てた目標なので、当然、部下に「やらされ感」が出ました。
仕事の進捗報告ミーティングも、僕にとっては意味のある場だったのですが、部下と「仕事をより良くするため」の議論をする場ではなかったので、部下にとっては「貴重な時間が奪われる場」だったと思います。
フィードバックや目標設定が部下の自発的な行動につながらない
本来は、フィードバックにより部下が「気づき」を得て、自発的にその行動が変化することが望ましいと考えます。
しかし、僕は進捗報告を受けた際に、細かな作業指示を与えていました。
目標自体も部下自身の心から出たものではないので、「言ったこと(言われたこと)」はしてくれますが、自分で考えて、工夫しながら仕事を進め、成長していくような状況にはなりませんでした。
業績や人材育成の成果につながらない
僕は、「動け、動け」とばかりに、部下に細かな目標を設定させ、その結果の報告を求めていました。
「目標」が部下を動かすと誤解し、「なぜ、それをするのか?」「なぜ、それが大切なのか?」という説明を十分していませんでした。
それでは、部下は仕事を理解し、自ら考えて最適な行動をとることはできません。
その結果、僕がした「管理」は、課の業績や人材育成の成果に、良い影響を与えることはできませんでした。
管理職の「役割」についての誤解
「目標設定・進捗管理」は「役割」としてわかりやすく、仕組み・権限があれば、できてしまうので、「何かをしている感」や「管理職っぽい感じ」は得られると思います。
しかし、それこそが「管理職の役割」と誤解し、そこに注力しても、業績や人材育成の成果にはつながらないことを僕は自身の経験から感じ取りました。
管理職が果たすべき「役割」
管理職として果たすべき自分の「役割」について迷っているときに、僕は次の2冊の本を読みました。
・「NINE LIES ABOUT WORK 仕事に関する9つの嘘」(株式会社サンマーク出版)
・「型破りCEOが世界を歩いて学んだリーダー5つの黄金律」(大和書房)
それぞれの次の一節をヒントに、僕は自分の管理職としての「役割」や「ビジョン」について考えることができました。
最高の企業は目標を落とし込まない。
最高の企業は「意味」を落とし込む。
「意味」と「目的」がわかれば人は動く
引用元「NINE LIES ABOUT WORK 仕事に関する9つの嘘」<著者:マーカス・バッキンガム、アシュリー・グッドール、訳者:櫻井祐子>(株式会社サンマーク出版)
そのビジョンはあなたの本心から出たものである。
そのビジョンは組織の存在理由を語っている。
そのビジョンはチームに何をもたらすかを語っている。
引用元「型破りCEOが世界を歩いて学んだリーダー5つの黄金律」<著者:ポール・デュプイ、訳者:呉亜矢>(大和書房)
管理職(課長)ができること・立場
管理職の「役割」を考えるにあたって、部下への「指示・報告の求め」以外で、管理職(課長)である僕が「できること」を思い浮かべました。
そして、次の2つに注目しました。
大勢の課員への発信や、かかわり
係長のとき、僕が発言・発信できる範囲は、自分の担当ラインの部下4〜5人でした。
事業単位である「課」の長になった僕は、係長職を含めて45人の課員と仕事を進めていくようになりました。
日ごろの発言や発信、面談などを通じて、課員全員とかかわることができます。
1つの事業に携わる課員の行動に、最も影響を与えることができる立場が管理職(課長)なのだと僕は考えます。
部署のトップとの緊密なかかわり
係長職のときは、部署のトップである部長職とは、直属の上司の「課長」を介して接することが多かったように思います。
また、仕事上の重要な判断を仰ぐことは多々ありましたが、事業についてどのような「思い」を持っているかを聞くような場面は少なかったように思います。
自分が「課長」となった今は、日常的な会話の中で、直接、部長職から「目標」に込められた「思い」を聞くことができます。
組織や部署の目標を最も的確に理解することができる立場が管理職(課長)なのだと僕は考えます。
管理職が果たすべき「役割」―仕事の「目的と意味」を伝えること―
管理職の立場―組織目標を最も的確に理解することができ、課員に最も影響を与えることができること―を理解すると、その役割を僕は次のように考えることができました。
管理職の役割は、仕事をする「目的と意味」をチーム全員に伝えること
僕がすべきだったことは、組織目標や自分の目標を部下に押し付けることではなく、チームが仕事をする「目的と意味」を部下に伝え、部下がイメージできるように「ビジョン」を掲げることだったことに僕は気づきました。
僕が一番に気にかけるべきだったのは、業績や個別の目標の進捗度ではなく、メンバーに向けて「どんなビジョンを掲げるか」だったのです。
「ビジョン」が備えるべきもの
「ビジョン」は目標・行動の軸になる
仕事の「目的と意味」を包含した「ビジョン」があることで、部下はそのビジョンに沿って、「自分の目標」をたてることができます。
そして、「自分の目標」なので、自発的に行動することができます。
さらに、「ビジョン」に込められた「目的と意味」を軸に、自分で考え、判断することができるようになります。
「ビジョン」はメンバーの目標・行動の軸になると僕は考えます。
「ビジョン」が備えるべき3つのもの
ビジョンを「メンバーの目標・行動の軸」と捉えると、ビジョンには次の3つの要素が必要だと僕は考えます。
目的地
チームが「どこを目指しているか」(目的)です。
この「目的地」に、メンバーが「自分の目標」を重ね合わせてくれることが理想です。
大切にするもの
チームが進んでいく道のりで「何を大切にしていくか」(意味)です。
この「大切にするもの」の理解が、メンバーを正しい判断・行動に導きます。
より良くなっていく実感
チームのメンバーが、目的地を目指す道のり・行動の中で得られる「良いもの」(未来) です。
魅力的な未来を感じられることが、メンバーをビジョンに惹きつけ、動かします。
管理職が果たすべき役割と「ビジョン」が備えるべき3つのもの
以上のことから、僕が学んだ「管理職の役割」と「ビジョンが備えるべき3つのもの」は次のとおりです。
✓ 管理職の役割は、「ビジョン」を掲げ、仕事の「目的と意味」をメンバーに伝えること。
✓ そのビジョンは、チームメンバーに次の3つを示し、与えてくれるものであること。
①チームが目指す“目的地”
②チームが行動していく上で、“大切にするもの”
③チームの行動を通じて、メンバーの人生・時間が“より良くなっていく実感”
本から得た学びを実践し、より良い明日、
より良い世の中に。
※この記事は、2024年3月19日の記事「【学び】ビジョンを掲げる」をリライトしたものです。
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